冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
平然とした様子で爆弾を落とされて、素っ頓狂な声が漏れる。
「これ、破ったらどうなると思う?」
「え、えっと……どうなるんですか」
これに関しては質問を質問で返すしかない。
飛鳥馬様の住む裏社会の世界なんて、想像できるはずがない。
もし想像できたとしても、それはあっち側に生きる夜の世界の人間だけだ。
「少なくとも皇帝っていう身分は剥奪されるだろうね。ひどい場合には飛鳥馬家から追放を命じられるかも」
そんなことをハツラツとした笑顔で言う飛鳥馬様が怖い。
それって、とんでもなく大変なことなんじゃないかって。
庶民のわたしでも分かることなのに。
「……そんなに危険なのに、どうして出てきちゃったんですか。こんな所にいたら、飛鳥馬様が危ないです」
「心配してくれてるの?優しーね」
そう言って大きな手がわたしの頭を優しく撫でる。