冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
「とにかく、早く車の中に戻ってください。わたしなんかといたら余計怪しまれます。目立つので」
「……、あやちゃんがおれに送られてくれるなら乗るよ」
じっと、漆黒の瞳に見つめられる。
そこには何を言っても揺るがない思いがあった。
「はぁ……、分かりました。わたしも乗りますので」
わたしの小さなため息は聞こえていたはずだろうに、飛鳥馬様はそんなことは気にせずに嬉しそうに笑っていた。
ぎゅっと手を握られて、飛鳥馬様とベンツに乗り込み、車が発車した。
車内は相変わらず薄暗い。
飛鳥馬様の隣にちょこんと座っているわたしは、身をできるだけ小さく縮めていた。
どうして2度も3度もこうして皇帝の車に乗っているのか。
不思議でならないよ……。
それに……、
「……どうしてそんなにくっついてくるんですか。飛鳥馬様」
「んー、あやちゃんに触れてたいから」