冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


距離を取ろうにも、飛鳥馬様がとんでもない力でわたしを抱きしめているから、逃げられない。


「へへ、あーやちゃんっ」



何なんだ、この方は。一体どうしちゃったんだろう。

さっきからだらしなく頬を緩めてこれはこれは幸せそうに笑っている飛鳥馬様は見たことがない。



「どう、しましたか……」

「もっかいおれの名前呼ーんで」

「それは、命令ですか。命令じゃないのなら……、」


「命令じゃないけど、皇帝の“お願い”。叶えてくれるよね」

「っ、〜〜〜」



本当に、このお方という人はずるい……っ!


そう言ったらわたしが断れないのを知っていて、あえて巧みな言葉選びをする様子がひどく恨めしい。


……けど。

飛鳥馬様を名前呼びするのは別に嫌じゃないから、素直に従おう。

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