冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


「……───りと、くん」

「なぁに、あやちゃん」

「麗仁、くん。……名前で呼んでも、無礼に当たらないのですか」


「うーん、本当だったらそうなるんだろうけど。

でも、あやちゃん限定で許してあげる。てか、おれがあやちゃんにそう呼んでもらいたい」



もう、諦めよう。わたしはこの方から、飛鳥馬様から……、麗仁くんから、逃げられない。

いつまでもわたしばかりを特別扱いする麗仁くんの言動にはもう慣れたものだ。


「……わたしも、お願いしていいでしょうか」

「うん、何でも言って。おれが全部叶えたげる」

「どんなことでも?」

「うん、どんなことでも」


そうオウム返しする麗仁くんの声に、冗談の色は含まれていなかった。

わたしが豪華客船クルーズの世界一周旅行に連れて行ってと言ったらきっと叶えてしまうんだろう。


何十億円もする豪邸に住みたいと言っても、それでさえも麗仁くんは叶えてしまうんだろう。

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