冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
日本語に直したら“基本的なパン屋”というネーミングセンスは、正直どうかしてると思うけれど。
まあ、英語にしたら多少なりとも響きはかっこいいからそこが救いなんだけど……。
シフトをいれるのは決まって土日の朝から夕方。
夜になったら、病院内のお店は全て閉まる。
それは当然、この街が夜の世界に呑み込まれていくから。
そして、ここでのわたしの名前は、七瀬彩夏ではなく、柏木 綾乃だ。
麗仁くんに見つからないための、わたしなりの策略。
本名を名乗って働いていたら、いつかきっと、麗仁くんにすぐにバレてしまうと思ったから。
揚げたてのカレーパンをトングを使ってステンレス製盆ざるの上に乗せていく。
最後にそれで油を切って、ワックスペーパーが敷かれたおしゃれなバスケットの中に盛り付けていく。
「店長〜、カレーパン仕上がりました!」