冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


「そう?なら良いんだけど…」と心配そうな心さんの声を聞きながら、わたしはカレーパンの入ったバスケットを机の上に綺麗に配置する。


これでよし……!


BASIC BAKERYの可愛い制服に身を包み、今日も1日バイトに勤しんだ。


 ♦


「店長、早めに上がらせてもらいます」

「あっ、うん!今日はお父さまとの面会だったんだっけ?」

「はい、そうです」


心さんからの質問にコクリと頷く。

このパン屋さんで働き始めた初日に、実は1度だけお父さんの病室まで足を運んだことがある。


その日はもう夕方で、早くしないとすぐに日が暮れてしまう時間帯だった。


行ってみたはいいものの、何年もの間疎遠になっていたお父さんと顔を合わせるというのは何だかいたたまれなくて、病室の扉の目の前でウロウロしていた。

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