冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
麗仁くんは多分、わたしのことが好き───。
それも、かなり。
好かれている自覚はあったけれど、わたしは今までそれに気づかないふりをしていた。
それは、わたしなんかを好きになっても、麗仁くんが不幸になると思っていたから。
あんなにも優しいお方を、わたしのせいで不幸になんてしたくない。だから、今すぐにでも溢れそうになる気持ちを押し殺して、わたしは今日まで身を潜めてきた。
麗仁くんのことが好きだと実感するまでに、時間はかからなかった。
きっと、ちょっとずつ毎日毎日、麗仁くんへの好感度が蓄積していって、気づけばそれが“恋情”に変わっていたというだけ。
とてもシンプルなんだ。恋に落ちる瞬間って。
わたしはお弁当袋を開け、いただきますと小さく呟き、お昼ご飯を食べ始める。
涙が零れてきそうだった。
麗仁くんの顔が脳裏に浮かんでは消えて、今でも全然忘れられないんだ。