冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
それはあなたのためにならないのに、どうしてもわたしの心が言うことを聞いてくれないの。
もう幸せはいらないって、求めないって決めたのに、わたしの心はいつもあなたの冷たい体温を求めている。
誰かに温めてもらわないと死んじゃうんじゃって心配になるくらいの麗仁くんを、わたしが今すぐに抱きしめたいって思っている。
どんなに強い決意だって、心の奥底に眠る本望には抗えない。
だけど、その欲望を抑えるほどの理性は、まだ残っている。だから、わたしはその理性に従う。
もう、自分勝手にはならない。
伊吹くんの時と同じように、大切だった人を傷つけたくないから───。
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午後もBASIC BAKERYで働いた後、わたしは今住んでいるおんぼろアパートに帰ってきた。
はぁ……、疲れたな。
そんな負の感情ばかりがわたしの心を覆っている。