冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
電話口の向こう側で、麗仁くんが心底安堵したような声を出す。
わたしの心臓は、その声を聞くたびにキュッと切なく高鳴る。今すぐにこの電話を切るべきなのに、わたしにはそれができない。
強い決意とは反対に、この恋に対する未練が強すぎるのだ。……できることならば、わたしはこのお方と幸せを見つけていきたい。
わたしの隣で、大好きな麗仁くんが笑っていて欲しい。
《あやちゃん、窓、開けてみて》
「……窓?」
麗仁くんの言う通りに、部屋の一角の窓のカーテンをめくり、ガラリと開けた。
すると、そこには───
《迎えに来たよ。──彩夏》
月光に照らされた、わたしの大好きな麗仁くんの姿が、おぼろげにわたしの瞳に映った。
歩道から、アパートの2階の部屋にいるわたしを見上げる麗仁くん。
スラリと長いモデルさん並みの身長に、サラリと風になびく黒髪。そして、麗仁くんが着るととっても様になる上質なスーツ。