冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
わたしの手に、足に、生暖かい何かが流れているから。
頬にかさりと柔らかい黒髪が触れる。
ほっそりとした、だけど程よい筋肉がついている体つきに、わたしは全てを悟ってしまう。
わたしは、撃たれてなんかいなかった。どんどんはっきりしていく視界の中、それを知る。
わたしを庇ったせいで、今死にそうになっている人がいる。それは、わたしが何よりも誰よりも大切にしたい人で……。
「麗仁、くん……っ!!」
どうしてっ、どうしてっ、……どうして!!
どうして麗仁くんが、わたしなんかを庇ったりするのよ……〜〜っ!!
冷たすぎる体温の持ち主の血は、怖いほどに熱くて。
残酷な現実を、肌に突きつけられている気がした。
と、とにかく救急車を呼ばなきゃ……っ。