冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
そうこうしているうちにも、麗仁くんはだんだんと弱り始めている。
慌ててスマホの電源をつけて、119と電話番号を打ち込み終える、その前に───
プルルルルルルッ、プルルルルルルッ。
どこか近くから、スマホの着信音が耳に入ってきた。
それは、地面に投げ出された麗仁くんのスマホからだった。着信元は、《真人》と表示されている。
真人って、仁科さんの下の名前、だよね……っ?
そう思ったら、その着信に縋ることしか考えられなくなった。
麗仁くんを支えながら地面に落ちていたスマホを拾い、横にスライドして電話に出る。
《…っあ、やっと出ましたか、》
「っ仁科さん……!!」
呆れたようなその声に、すかさず大きく被せる。
電話の向こうで、仁科さんが息を呑んで目を見開くのが分かった。