冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


そうこうしているうちにも、麗仁くんはだんだんと弱り始めている。

慌ててスマホの電源をつけて、119と電話番号を打ち込み終える、その前に───


プルルルルルルッ、プルルルルルルッ。

どこか近くから、スマホの着信音が耳に入ってきた。


それは、地面に投げ出された麗仁くんのスマホからだった。着信元は、《真人》と表示されている。


真人って、仁科さんの下の名前、だよね……っ?

そう思ったら、その着信に縋ることしか考えられなくなった。


麗仁くんを支えながら地面に落ちていたスマホを拾い、横にスライドして電話に出る。



《…っあ、やっと出ましたか、》

「っ仁科さん……!!」



呆れたようなその声に、すかさず大きく被せる。

電話の向こうで、仁科さんが息を呑んで目を見開くのが分かった。

< 280 / 399 >

この作品をシェア

pagetop