冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


「さあ、七瀬様も参りましょう。あなたも着いて来るべきお方ですから」



救急隊員の人たちに抱えられ、ストレッチャーに乗せられて救急車の中へ搬送された麗仁くんに続き、わたしもその救急車に乗せてもらった。


麗仁くんの体に沢山のチューブが繋がれ、応急処置が施されていくのをただぼんやりと見つめていることしかできない。


それが、どうしようもなく悔しくて、不甲斐なかった。



「仁科さん、……。この救急車は…、その」

「あ、やっぱ気づきましたか」

「……はい」



何に気付いたかは明確ではないけれど、きっと、そういうことだと思う。



「そうです、この救急車は、夜の世界の住民専用の物。そして、今向かっている先の病院は、飛鳥馬様が入院すると時があるかもしれないからというだけの理由で建てられた、専用病院なのです」



仁科さんの説明を聞いて、わたしはうわあ、と感銘を受ける。わたし、ここまで生きる世界が違う人のこと、好きになっちゃったんだ……。

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