冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
かんっぜんにやらかした……。
でも、不思議と後悔はないの。
麗仁くんを好きになったことを、もうなかったことには出来ないの。
それくらい、わたしはこのお方に溺れてしまっている。
会っていない間も、ずっと。
むしろ、会えないからこそ麗仁くんの存在がわたしの中でとても大きなものだったんだって実感できた。
「麗仁くん、どうか目を覚まして……。先に逝っちゃうなんて、そんなのいやだよ」
そんな弱々しい声が聞こえたかどうかは分からない。
だけど、わたしが握っていた麗仁くんの手の指が、ピクリ…、と震えた気がした。
「……っ、飛鳥馬様」
隣に座る仁科さんも、その手の震えに気づいたみたいだ。
眉間にシワを作って、ずっと俯いていた状態だって仁科さんがバッと顔を上げる。
……そうだよね。仁科さんだって、きっと物凄く不安なはずだ。自分の主たる方が、今日突然にして中に撃たれたというのだから。