冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


……それでも、おれだけがあやちゃんの心の中にいたいんだ。それは、独占欲に近い、おれの淡い願い。


そんなことを願ったら、君を困らせてしまうだけなのに。


おれは、君が“昔のこと”を思い出さないことを強く願って、その上で隣にいる卑怯者だ。


君が忘れてくれているから、おれは気丈に振る舞える。


“優しくて強くて、かっこいい麗仁くん”でいられる。

───本当は、そんなことないのに。



『おれの言うことが聞けねーの?おれに逆らえる権力、お前は持ち合わせてないと思うんだけど』



目を閉じれば、今でもはっきりと聞こえてくる声。

冷たくて、残酷な言葉たち。



『───あ、言っとくけどお前、おれに命握られてるから』

『だからたーっぷり、おれを満足させてね』



傍若無人さが隠しきれていない、幼き少年の声。

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