冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
───最低だったんだ、おれは。
あやちゃんに向かって、最低なことばかりした。
愛を知らなかったから、人に優しく接する方法も知らない。
そんな言い訳は、もう聞き飽きた。
幼少期時代、おれとあやちゃんは主従関係にあった。
『ねー、お前さ、なんでいっつも泣いてるわけ?不愉快なんだけど』
『…っひっく、うぅ〜〜、ごめんなさぃ』
『ほら、早く泣き止めって。慰めてなんかやらねぇからな』
白い花がらのワンピースを着たあやちゃんが、蹲って泣いている。
それなのにおれは、そんな言葉ばかり投げつけて。
……あやちゃんを余計、怖がらせた。