冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


好きが意地悪に繋がって、自分勝手に振る舞って。

あの頃のおれは、本当に情けなかった。幼すぎた。



『麗仁、数日後にお前の所に女の子がやって来る。私が直々に指名した少女だ。そしてその子はいずれ───お前の婚約者となる』



いつもはおれに何の興味もない父上が、おれの部屋を訪れてそう言い放った時は驚いた。


それと同時に、随分と強引で、あんまりだと思った。


その少女とやらに会うことにおれは全く気乗りしなかった。むしろ、その時間が心底面倒だとも思っていた。


……だけど。

あの日、初めてその少女を見た時。


おれの心は、一瞬でその子のものとなった。


赤いチェック柄のスカートを履いて、上はフリルがふんだんにあしらわれた白の洋服。

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