冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
『……これからおれと、外に出るよ』
『………っ、え?』
両親に愛されていないおれは、誰からも愛されない。
だからきっとこの子も、おれのことを愛してはくれないだろう。母親譲りのきれーな顔とは大違いなおれの醜さを知ったら、きっとこの子も離れて行ってしまうのだろう。
……どうせおれは、独りがお似合いなんだ。
だから、期待はしないさ。
ただ、ちょっと興味が湧いたというだけ。
だけどもう、恋に落ちてしまった時点で、そんな強がりは許されなかった。
誰もが崇高する皇帝の住まう皇神居。
それは、おれのためだけに作られた、おれを閉じ込めておくためのただの“檻”。
何の幸せもない冷たい監獄の中で、今日だけはおれは独りじゃなかった。