冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
おれの隣には、あやちゃんがいてくれた───。
『………っ、』
おれが促した後も、あやちゃんは一向に動こうとしない。
それが少し不服で、玉座からゆっくりと腰を上げたおれは、あやちゃんの元へと歩いて行く。
『ねぇ……、いつまで待たせんの?お前は命令されないと、動けないタチ?』
『めんどくせぇ……』
ただ、格好つけたかったんだと思う。
顎を柔く掴んで、おれの方を向かせる。
瞬間、おれはその綺麗な茶色の瞳に吸い込まれそうになった。
『っ、……っ!?』
あやちゃんのビックリした顔がすぐそこにある。
そんなあやちゃんをじっと見据えて、おれは大広間の観衆へと目を向ける。
正確に言えば、おれの護衛や配下たちの方へと。