冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
おれを叱るあやちゃんを見て、もっと相手に興味が湧いた。この子は、他の誰とも違う強さがある。
……この子なら、おれの醜いところを知っても前からいなくなるのではなく、今みたいに叱ってくれるんじゃないか。
マズいと分かっているのに、あやちゃんへの期待はますます大きくなっていく。
『ねえ、七瀬サン。おれ、君のことなんて呼んだらいい?』
『…っえ、えっと……。飛鳥馬様が、決めた呼び名で…』
その“様”が気に入らない。おれのことを名字で呼ぶことも。
だけど、今おれがあやちゃんに名前で呼んでと言っても、きっと困らせてしまうだけだろうから、言わない。
『んー、じゃあ“彩夏”って呼ぶ』
『……!』
『なに?』
おれがあやちゃんの下の名前を呼んだ時、すごくビックリされたからおれも気になった。