冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


その言葉に、あやちゃんの顔が真っ青になっていく。


違う、そんな顔をさせたいんじゃない……。聞いてほしいんだ、おれのこと。


『妙に綺麗で、よそよそしくて、おれとは似ても似つかないこの“麗仁”って名前が大キライだった』


……そう、きらい“だった”。



『……だけどね、お前が呼んでくれる名前は、キライじゃないよ』

『……!』



色白の頬がほんのりとピンク色に染まる。

大きくてくりくりとした瞳が、ゆっくりと見開かれていく。どこまでも透き通った薄茶色に、呑まれてしまいそうだった。


『わ、わたしは……っ、りとくんの名前、好きです!』

『…え、?』


今度がおれが目をまん丸くする番だった。

< 299 / 399 >

この作品をシェア

pagetop