冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


『“麗”しく“仁”徳のあるお方、それがりとくん。りとくんにとっても似合っています!』


それを聞いた時、おれがどんなに嬉しかったか君は知っているだろうか。

どんなに胸が震えたか、気づいているのだろうか。


いつも無自覚におれを煽る君が愛おしくてたまらない。


ずっとおれの側に置いておきたい。

……おれのことを、好きになって欲しい。


おれはいつまでも君のことだけを見ているから、君もおれだけを見ていて。


そんなことを願った、幼きあの頃。


 ♦


どのくらい時間が経ったか分からない。

ただ、麗仁くんの手術が終わるのを待つしかなかったこの時間は、地獄のように長く思えた。



「七瀬様、大丈夫ですよ。あの方はそんな簡単にくたばるような人間ではございませんので」

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