冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
もう、自分の気持ちにウソはつかないって決めた。
大切な人の目の前なら、なおさら。
「あやちゃん、“お願いだから早く目を覚まして〜〜”とか何とか言ってたね。あれ、かわいかったよ」
「………っえ?」
それって……まだ麗仁くんが目を覚まさない時に、わたしが言った……。
そこではっとする。
「り、麗仁くん……っ!起きてたならなんですぐに返事してくれなかったの!」
「あ、やば」
抱きしめる腕の力を緩めて、麗仁くんの表情を覗えば。
そこには意地悪く唇の片端を上げる麗仁くんがいて。
「わ、わたしがどれだけ心配したと思ってるのよ……〜〜っ」
力なく項垂れたわたしの掠れた声に、麗仁くんの優しい声が被さるようにして重なって。
「ごめんね、あやちゃん。返事したくても、出来なかった。ずっと暗闇を彷徨っているみたいだった。……だけど、あやちゃんがおれをそこから引きずり上げてくれた」