冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


眉を下げて、申し訳無さそうにそう言われれば、わたしはもうこの人を許すことしか出来ない。



「そう、だったんですか……」


ここで一気に我に返り、敬語に戻ってしまう。

そうだよ、麗仁くんが返事を返さなかったのはわざとじゃないのに。


朦朧とした意識の中を彷徨って、わたしの声だけを頼りに目を覚ましてくれたんだ。


「麗仁くん、おかえりなさい」


その言葉に、麗仁くんは目を見開いて、すぐにくしゃっとした優しい笑顔になった。


「──うん、ただいま。あやちゃん」



大きくてひんやりとした手が、わたしの頭を撫でる。

慈しむかのように、大事に、愛されてるって分かる優しい撫で方。

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