冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
「い、いえ…違うんです。わたしが無理に持っていきたいと仁科さんにお願いしたんです」
なんとなく、仁科さんが責められるような気がして。
最初に事実を言っておいたのは正解だったのもしれない。
「そう…、それならいい。あやちゃん、荷物なんかそこらへんに置いてこっちにおいで」
麗仁くんの声が柔らかくなって、表情も優しいものに変わっていた。
小さく手招きをする麗仁くんに吸い寄せられるかのように、わたしの体は言われた通りに動く。
「もっと早く来てくれてもよかったのに」
拗ねたような声と表情が可愛くて、胸がキュンと鳴る。
「…寂しかった、ですか?」
勇気を出して言ってみた。
上目遣いでわたしを見やる麗仁くんの綺麗な顔に見つめられて、自然とドキドキが増してしまう。
「うん。すっごく寂しかった」