冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


むっとして少し語気を荒げれば。


──うん、知ってる。

って言葉が耳に届いて、優しく唇を塞がれた。


麗仁くんのキスは、いつもどこか控えめで、上品さを纏っている。

決して激しく求めるようなことをしない麗仁くんのキスがわたしは好きだけど、もっとしてほしいって思っちゃう自分がいる。


そんな我儘は、口にはできないけれど。



「あやちゃん、今日はいつにも増して積極的だね?」


にやりと笑われて、頬に熱が集まる。

今日も今日とて、意地悪なことを言う麗仁くんを、こんなにも愛おしいって思ったことは今までにない───。


 ♦


わたしは約1ヶ月ぶりに、学校に復帰することが出来た。


山西先生はクラスメイトに『一身上の都合により学校を1ヶ月ほど休まざるを得なかった』と説明してくれてたらしく、質問攻めに遭うことはなかった。

< 314 / 399 >

この作品をシェア

pagetop