冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
「わたしには何でも言っていいんだからね、麗仁くん」
というか、言ってほしいよ……。
麗仁くんの背中に腕を回しながら、そう言った。
麗仁くんはそれに、「はは、うん」と返すだけだった。
「……ねぇ、麗仁くん。大好きだよ」
それは、囁くような小さな声。
それでも、すぐ側にいる麗仁くんにはちゃんと聞こえたみたいで。
わたしを抱きしめていた腕の力を緩め、わたしの顔を見つめながら、
「おれもあやちゃんが大好き──」
窮屈そうな笑みを浮かべて、そう言った。
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朝の時よりも断然元気のない姿に、どれだけ不安を覚えたことだろう。
夜、家に帰って自分で握って焼いたハンバーグを食べている時、そんなことを思った。
今思えば、わたしたちの関係は本当に曖昧だ。
付き合おうなんてお互いに言っていないし、そのことにもわざと触れないようにしているみたい。