冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
ただ、誰かが誰かを殴る鈍い音だけがはっきりと聞こえてきて。
わたしを庇った麗仁くんが、また血を流しているのをこの目で見たんだ。
「りと、くん……?血が、血が出て……っ」
「……ん、これくらい大したことない」
そう言って、自分に殴りかかってきた相手の男を踏みにじった。
こめかみ辺りから鮮烈な血を流しながら、襲いかかってくる沢山の大男たちを殴り倒していく麗仁くん。
これは一体、どういうこと……っ?
この人たちは、麗仁くんの仲間じゃないの?どこから来た人たちなの?
必死に視線を彷徨わせていると、ある紋章が飛び込んできた。
わたしはあの模様を、よく知っている───。
極寒の冬に咲き誇る霜華のごとく、凛としたその模様。