冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


なぜ、太陽の昇りきった明るい世界に、あっち側の人間である皇帝がいるの?

なぜ、わたしの目の前に現れて、突然キスをしてきたの?


わたしの心の中に、身勝手なことをしてきた飛鳥馬様への疑問が沢山湧いてくる。


だけど、それを口にしてはいけない。皇帝がすることは皇帝が決める。皇帝がしたいと思ったことは全力で肯定する。


皇帝のしたことに口出ししてはいけない。



「あの……、飛鳥馬、様」



いつまでも飛鳥馬様の手によって拘束されていた腕をいい加減離してもらいたかったけれど、それをどう言い出すべきなのか分からない。


わたしは常に、このお方の機嫌を伺っている。


そんなわたしの心の内を読み取ったのか、飛鳥馬様はやっぱり少しだけ寂しそうな顔をして、優しく笑った。


ド、クン……ッ。


暗影の中で見えたその笑顔が、異様なほどに美しかった。

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