冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
伊吹が息をする暇もないままに、麗仁の攻撃は加速する。
「おれたちの世界にはなァ、破っちゃいけないルールってのがあるんだよ」
「ぐっ、は……ッ。ぅ゙」
体の所々から血を流す伊吹は、麗仁から距離を取って息を整え始めた。
だけど、そんな伊吹を麗仁が見逃すはずがない。
すぐに蹴りを入れて、地面に尻をつかせる。
「それはね、一般人には危害を加えてはならないってこと。これ、東ノ街の常識だからよく覚えておいてね?」
その言葉をどこか遠くで聞きながら、麗仁の最後の一撃で伊吹はとうとう意識を失った。
勝者、飛鳥馬麗仁。
これにて、本抗争は終幕した───。
けたましいサイレンが鳴り響く中、1人の男は愛する女を抱えて、バイクに乗りどこかへ消え去って行った。