冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
わたしの掠れ声は、しっかりとその人に届いたらしく。
「彩夏っ……!よかった、本当に、良かったぁ〜〜」
目をまん丸くして、ビックリしてしまう。
わたしに抱きついて泣きじゃくるその人は、本当にわたしのお母さんなの……っ?
茶髪から香る爽やかなローズの香りから、すぐに悟った。
───お母さんが、わたしに会いに来てくれた。
それがどれだけ凄いことか、知ってる?
「……っおかあ、さん」
「あやかっ、ごめんね、今まで会いに行けなくて……っ。ずっと1人にさせて、本当にごめんなさい」
お母さんの悲痛な叫びから、娘のわたしに対して真摯に向き合ってくれているんだと分かる。
「……来てくれてありがとう」
本当は、言ってやりたいことが沢山あった。
幼い頃のわたしに酷い言葉ばかりぶつけていたお母さんを嫌いになりたかった。
……だけど、やっぱり肉親を嫌いになることは出来なかった。
小さい頃、わたしが愛を欲する相手はお母さんで、その願いは叶わなかったけど、今わたしを心配して病院に駆けつけてくれたという事実がある。