冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


うわーんうわーんと子どものように泣きじゃくりながら、わたしはとめどなく溢れる涙を流し続けた。


……お母さんの、腕の中で。


「彩夏に渡さなきゃいけないものがあるの」

「…ん?なにそれ」



お互いの涙がやっとのことで引いて、しばらく経った後。

お母さんが神妙な顔つきでそんな話を切り出してくるから、ビックリする。



「これなんだけど……」


差し出されたのは、1枚の封筒。

材質は凄く高いものを使っているというのが手触りで伝わり、すぐに誰からのものかを察した。


蘭の花が縦に連なり、その周りを細々とした氷の霜が覆っている。


この模様は、……麗仁くんだ。


「どうして、お母さんがこれを……?」

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