冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


そこでようやくわたしはその存在を思い出して、ハッとする。


「…お母さん、この封筒、開けていいの?」

「ええ、もちろん」


心臓の動悸がおかしいくらいに早くなる。

心臓が早鐘を打ち、緊張を助長してしまう。


ふぅ、と息を吐いて、わたしはそっと封を切った。


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あやちゃんへ

この手紙を読み終わる頃には、
おれのことなんて忘れてくれていたらいい。
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書き出しの文字に、早くも目に涙が浮かびそうになる。

麗仁くんの達筆な文字が、歪んで見えるよ……っ。


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今までずっと、迷惑かけたね。本当にごめん。
誤り尽くしても足りないくらい。
おれの勝手な好意を知った上で、それでも
優しく接してくれてありがとう。
あやちゃんと過ごす時間は、おれにとって
本当に宝物のように素敵なものだった。

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