冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


「彩夏、麗仁くんは最後まであなたの側にいてくれたわ。ずっと心配して、彩夏を想って泣いていた」

「そんな報告、いらないよ……っ!」


わたしを慰めてくれているお母さんに、キツい言葉を返してしまう。

背中を撫でるお母さんの手に、力が込められた。



「……彩夏、知ってる?麗仁くんの持病が再発してしまったこと」


恐る恐るという感じでわたしに訊ねてきたお母さん。


持病が再発って……、わたし、麗仁くんが持病を持っていたことさえ知らなかった、よ……っ。


お母さんの神妙な顔つきから、麗仁くんの病気は本当のことなんだって思い知らされる。


「麗仁くん、は……っ、何の病気なの」


それはどれくらい重いの。

ちゃんと治る病気なんだよね。

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