冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
その思いで感情が支配されていく。
「だめよ、絶対にダメ。彩夏、自分が今重症患者だっていう自覚はあるの?しっかりしなさい」
お母さんが目の色を変えて、わたしを止めに入る。
それが鬱陶しくて、思わずその手を振り払おうとしたけれど、出来なかった。
……わたしの体が、動かなかったから。
「なん、で……っどうして動かないの!」
あぁ、もう、感情がぐっちゃぐちゃだ。
「彩夏、落ち着いて……っ、麗仁くんのことはもう諦めなさい」
今は、お母さんが凄く冷たい人間に思えてしまう。
娘が行きたいって言ってるんだから、黙って行かせてよ。
そんな真っ黒な感情に支配されてしまいそうで、怖くなる。自分の一言で、大切な人を傷つけてしまうことへの不安がどんどん大きくなる。
「……っなんでそんなこと言うの!!お母さんは勝手だよ!わたしのこと、なんにも知らないくせに……っ」