冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
最愛は此処に


『飛鳥馬様、大変申し上げにくいのですが、……』

『なんだ、言ってみろ』


医者を目の前にしたのは、数年ぶりだ。

緊張で手に汗を握っているのが分かる。


……おれは、一体何を恐れているんだか。

情けない。



『心臓病が、再発いたしました』


目の前の壁は、いつだっておれの前に高く厚く立ちはだかる。

決して、その先の未来をおれに見せてはくれない。


愛する人と見る将来を、夢見させてはくれない。


残酷すぎやしないか。おれは前世で、一体何を仕出かしたと言うんだ。


『そう、ですか……はは』

『飛鳥馬様……』

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