冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
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腹部の傷が癒えてきた頃。
もうすっかり夏休みに入ってしまった。
一応、わたしは明日から文化祭の準備に携われることになっている。
「お父さんまでわざわざ見舞いに来てくれてありがとう」
「はは、彩夏に会いたくなったからね」
物腰柔らかに笑いながら、お父さんはわたしに食べさせるためのみかんを剝いてくれている。
「彩夏は明日から学校かい?」
「…うん、そうだよ」
「きっとみんな明るく迎えてくれるよ」
「…だね」
お父さんと話している間も、ある人のことが気になって仕方がない。
今日も、本当は麗仁くんがわたしに会いにこの病院に来ていたらしい。
看護師さんが教えてくれた。