冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
ここまで無視し続けていたら、今度はわたしの良心が傷つきそうだよ……。
「彩夏、…何だか元気がないね」
お父さんが心配そうにわたしの顔を覗き込んでくるものだから、すぐに明るい笑みを貼り付けた。
「ん?なんのこと?」
「……、」
わたしの必死のごまかしに、お父さんは何を返すでもなく苦い顔をしただけだった。
───翌日の朝。
学校の制服に着替えながら、わたしはぼーっと宙を見つめていた。
今日から本当に学校に行くんだ……。
まるで実感が湧かないや。
行きも帰りもお母さんの車で送り迎えしてもらうことになっている。
「……よし、行ってきます」