冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
ここ、東宮内高校の階段は螺旋階段になっていて、足元に隙間があるのがちょっと怖い。こういう作りをした階段が元から苦手だったというのもあるけれど……。
2階に上がり、また右に曲がる。
その先に、2年生の普通科の教室が並んでいる。6クラスある中でも、わたしはその2年3組だ。
「彩夏っ!おはよ〜」
教室に入ると、わたしが登校してきたことに気づいた友達の美結ちゃんがわたしに声をかけてきた。今日も元気で明るい声に思わず笑みがこぼれた。
「おはよう、美結ちゃん!」
「ああ、今日も私の天使可愛すぎぃ」
「え、天使?どこどこ??」
美結ちゃんがそんなことを言ったからどこかに本当に天使がいるのかと思い、辺りを見回したけれど、別段変わったことはない。
「美結ちゃん、どこにも天使はいないよ?」
「も〜、この子はどこまで鈍感なのよー。美結、困っちゃう!」
「えぇ……っ、どういうこと…!?」
わたしの頬を両手で挟みながらそんなことを言った美結ちゃん。