冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
あまりにも小さくボソリと呟かれた言葉。
だけど、確かに聞こえたの。
「あや、ちゃん……。おれ、ずっと待ってた」
「うん、」
「もうこんなに遅い時間だから、来てくれないかと思ってた」
「……う、ん」
心の中で、罪悪感が広がっていく。
寝てはいけなかった時に、簡単に眠りに落ちてしまった自分自身を、こんなに恨んだことはない。
「……だけどあやちゃん、やっぱり来てくれた」
そう言って、眩しいくらいの笑顔を見せてくれた。
「……あれ、嘘だから」
「え……?」
「手紙に書いた、他の人と幸せになってほしいってやつ。本当は、おれ以外の男があやちゃんの隣に並んでいるのなんて、心底見たくない。……あやちゃんを幸せにするのは、おれだけがいい」
「ふふっ、そっか。わたしも麗仁くんじゃなきゃいやだ」
わたしに沢山の愛を囁いてくれる。
そんな君が、たまらなく愛おしい───。
「…こんなおれだけど、もう1度あやちゃんとやり直したい。──七瀬彩夏さん、おれと付き合ってください」
真っ直ぐな瞳に射抜かれる。
いつの間にかわたしに向き直って立っていた麗仁くんを優しい眼差しで見つめる。
そして、迷いなく、
「はい……っ、よろしくお願いします!」
たまらなく愛おしい君の胸の中に飛び込んだ。