冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


 -麗仁side-


あやちゃんはきっとこれからも、昔のことを思い出すことはない。

それだけ記憶は脆くて、儚いものだから。


……だけど、少しずつでもあやちゃんの記憶が蘇っていく、なんてことがあればいいなとも思ってる。


そうなることを期待してるおれが、確かにいるんだ。


優しさを知らなかったおれに、誰が人に優しくすることの大切さを教えてくれたと思う?


『わたし、本物の愛をくれる人でなきゃ、満足出来ません』

『……へぇ?そんなこと、お前ごときが言っていいとでも思ってんの?』


あやちゃんは、最初からおれの本性を見抜いていたよね。


おれが人を愛せないって、見抜いたような真っ直ぐな瞳で射抜いてきたのを、今でも覚えてる。

あの時、正直おれは物凄く焦ったんだ。

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