冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


自分が必死に隠してきた弱さを暴かれそうになったことに、ここまで焦りを覚えたのはあやちゃんが初めてだった。


“心臓病”っていう大きな欠陥を持ったおれを誰1人愛してはくれない。

……いつ死ぬかもわからないおれは、誰も愛してはいけない。


誰も、愛せない。


だけど、あやちゃんがおれの閉ざされた心をどんどん開いていった。


人の温かさを知った。そして同時に、自分の冷酷さに気づいてしまった。


『りーとくん…っ!今日は何して遊ぶー?』

『……あやちゃん、』

『ん?なぁに』

『あやちゃんはおれと結婚してくれるよね』

『へ……?』


おれの言葉に珍しく動揺した顔を見せたあやちゃん。


それだけで、心臓がドクンッと鳴って不安になった。


『あや、本物の愛をくれる人でなきゃ、満足出来ないよ?』

『……へぇ?そんなこと、お前ごときが言っていいとでも思ってんの?』


挑発気味におれを煽ってくるのは、わざとか、それとも無自覚か。

今考えれば、すぐに分かる。


あやちゃんのあの発言は、おれを見定めるためのものだったのだろう。

< 393 / 399 >

この作品をシェア

pagetop