冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
自分が必死に隠してきた弱さを暴かれそうになったことに、ここまで焦りを覚えたのはあやちゃんが初めてだった。
“心臓病”っていう大きな欠陥を持ったおれを誰1人愛してはくれない。
……いつ死ぬかもわからないおれは、誰も愛してはいけない。
誰も、愛せない。
だけど、あやちゃんがおれの閉ざされた心をどんどん開いていった。
人の温かさを知った。そして同時に、自分の冷酷さに気づいてしまった。
『りーとくん…っ!今日は何して遊ぶー?』
『……あやちゃん、』
『ん?なぁに』
『あやちゃんはおれと結婚してくれるよね』
『へ……?』
おれの言葉に珍しく動揺した顔を見せたあやちゃん。
それだけで、心臓がドクンッと鳴って不安になった。
『あや、本物の愛をくれる人でなきゃ、満足出来ないよ?』
『……へぇ?そんなこと、お前ごときが言っていいとでも思ってんの?』
挑発気味におれを煽ってくるのは、わざとか、それとも無自覚か。
今考えれば、すぐに分かる。
あやちゃんのあの発言は、おれを見定めるためのものだったのだろう。