冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
1人の女子生徒がガタッと大きな音を出して椅子を倒し、とても驚いている甲高い声でそう叫んだ。
椅子から立ち上がった女の子の方を見ながら、他のクラスメイトたちも「うんうん」と頷き合って先生の次の言葉を固唾を呑んで待つ。
「ああ、本当だ。先生も驚いてはいるが、これはあくまでも学校側の方針だ。ご令嬢やご令息方全員がこれに賛同してくれているとは限らない」
歓喜で高ぶっていた生徒たち全員がその言葉を聞き、一瞬落胆したような表情を見せた。
だけど、それもほんの少しの出来事で、みんなはその交流したいという気持ちが一方通行だったとしても会えるだけで大満足だと思ったのか、すぐに蕩けそうな笑顔になる。
わたしも、すっごく楽しみだなあ……。学校で伊吹くんと一緒に時間を過ごせるなんて……、嬉しい以外の感情が見つからない!
だって、いつもは厳しい校則のせいで一緒に学校での時間を過ごせない上に、生徒の数が多い朝も一緒に登校することが出来ていないのだ。
平日に会える唯一の時間は、生徒たちがほとんど帰り閑散とした放課後。
それも、まだ学校に残っている生徒に見つからないように最新の注意を払いながら、伊吹くんがわたしを家まで送ってくれる間だけ。
わたしたちは、付き合っていることを周囲に秘密にしなければならない。もちろん、お互いの両親にも知られてはならない。