冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
だからわたしは、あの時男の子がしてくれた告白に、“彼氏がいる”じゃなくて“好きな人がいる”と誤魔化さなければならなかったのだ。
そんな、ヒミツの関係。
心苦しいと思う時はある。
伊吹くんと自分の違いに落胆したことは何度もある。
生まれつき持った身分の差というものはいくら頑張ったところで変えることはできない。
御曹司と庶民の恋愛に、ないものねだりは許されない。
「交流会の日時は今週、6月2日の月曜日だ。失礼なことがないようにしっかりと気をつけながらも、思う存分に楽しめ。これはもう次にない機械だぞ」
先生のしっかりと通った低い声に、クラスメイトのみんなが勢い良く頷く。
少しだけ伊吹くんのことでマイナス思考になっていたわたしも、気を取り直して明るい気持ちでいる努力をした。
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3限目の移動教室。
わたしは理科の教材を持って美結ちゃんと一緒に廊下を歩いていた。
「いや〜、でもほんと驚いたよねっ!まさか東宮内に通う御曹司たちに会えるなんて!」
「うん、そうだね。ちょっと楽しみ」