冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
明るくわたしに話しかけてきた美結ちゃんに少しの罪悪感を抱く。
伊吹くんとのお付き合いを大好きな友達である美結ちゃんにも隠さなきゃいけないということがとっても心苦しい。
ズキズキと痛み続ける心をどうにか隠して、わたしは笑顔でそう言った。
「もー、彩夏ったら!少し、じゃなくてめっちゃ、でしょ!こんな機会2度とないって先生も言ってたじゃない」
「あ、はは…そうだね」
何とか暗い声に聞こえないように、明るい声を絞り出してまた笑う。わたしのその笑顔は、きっと不自然だったと思う。
無理に笑っているように見えたと思う。それでも、優しい美結ちゃんはそれに気づかないでいてくれるから……。
わたしはそれを利用したんだ。
───ごめんね、美結ちゃん。
大切な友達に伝えられないような身分の違いすぎる人と付き合ってしまって……。これは全部、わたしのせいだ。
理科が終わり、昼休みが過ぎ、そして例の放課後がやってきた。
実行委員の集まりを終えて、誰もいない静かな教室に戻ってきたわたし。
教室に取り付けられた大きな窓から入ってくる西日が、寂しいけれどどこか落ち着く雰囲気を醸し出している。