冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


生徒数2000人を超える東宮内高校の校内は、今は眩しすぎる夕暮れの太陽から身を潜めるように静かだ。


ここ、東宮内の生徒の割合は女子が4割、男子が6割。


そしてご令嬢ご令息方のクラスの生徒が1100人ほどを占め、残りは普通科の生徒が900人ほど。


なぜわたしたちよりも身分の高き者たちに「〜科」というものが付けられていないのか。


それは、今からおよそ13年前、この高校が創立されて35年が経った頃だった。

この東宮内に新たに「庶民制度」が加わったのは。


創立初期、この高校に庶民も通えるような仕組みはなかった。それが理事により作られたのは、まだ記憶に新しい。


話を戻すが、身分の高き者たちのクラスに「〜科」と付けられていないのは、元々この高校は“昔貴族や華族だった者たち”を中心とする財閥家の跡取りのためだけに作られたからだ。


ただの庶民であるわたしがなぜこんな情報を知っているのかといえば、それは伊吹くんが教えてくれたから。


それ以外にない。


教室の窓側の一番後ろの席の机に取り付けられているフックに掛けておいたカバンを手に取り、それを肩にかけた。

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