冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


すると、



「彩夏」



もう聞き慣れた優しい低音に名前を呼ばれる。


振り返ると、教室の扉によりかかり、わたしを見つめている伊吹くんがいた。



「伊吹くん…っ!」



静かな空間に、わたしの嬉しそうな声だけが響いた。



「彩夏、昨日ぶり。今日はちゃーんと電話に出るんだよ」



駆け寄ったわたしの腰が伊吹くんの細くもたくましい腕に巻きつけられ、優しく引き寄せられた。


ど、ドキドキする……っ。


体全部が伊吹くんとピッタリ密着して、触れていないところがないってくらい2人の距離がゼロになる。



「う、うんっ!ちゃんと出る。5コール以内に!」

「だめだよ。心配させた罰としてこれからは俺からの電話は3コール以内に出て」



さ、3コール以内に……っ!?

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