冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
そして、それを実際怖いと感じてしまったことも今までに沢山あった。
「…もうすぐ文化祭でしょ?それの経費とか、日程とかを決めてると遅くなっちゃって……、」
果たしてこのウソを彼氏は信じてくれるのか。
心臓が痛くなるくらいドキドキしながら、わたしは恐る恐るその顔を見やる。
わたしの彼氏である天馬 伊吹くんは、感が鋭い上にわたしの少しの変化に対して凄く敏感だ。
「……そっか、それならいいんだ。彩夏、文化祭実行委員だったもんね」
「う、うん……。そうなの」
なんとか、騙せたのかな……?
笑ってそう言った伊吹くんの顔は安心したように緩められているから、きっと信じてくれたんだと思う。
そのことにわたしは息の仕方を思い出せたかのようにほっと息をつき、ニコッと笑みを浮かべた。
つい20分ほど前のわたしは、本当に真剣に窒息死するんじゃないかと思うほど恐怖で頭がどうにかなりそうだったのだ。