冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


この縛り縛られ続けている伊吹くんとわたしの関係は、ちゃんと“恋人”っていう関係の括りに入っている……よね。


普段よりも幾分と機嫌の良い伊吹くんの横顔をそれ以上見ていられなくて、わたしは気づかれないようにバッと頭の向きを前に戻し、2人一緒に手を繋ぎながら昇降口に向かった。



「それじゃあまた明…」

「彩夏、本当に1人で帰れる?やっぱ危ないし心配だから俺が家まで送った方がいいよね」



校舎から校門までに続く綺麗に敷き詰められた石畳の道を伊吹くんと歩き、今は校門を出てすぐの所。


また明日、と言い終わる前に伊吹くんが心配そうな顔をしながら、そんなことを言った。


え、えっとでも……伊吹くん今日お家の大事な用事があるから一緒に帰れないって言ってたよね。


学校が終わったらすぐに家に向かわなきゃいけないって……。



「ううん、私は大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」



伊吹くんに安心してもらうために、笑顔でそう伝えた。


それにやっぱり、私を家まで送るためだけに伊吹くんの用事を邪魔したくない。きっと、凄く大事な用事だと思うから。

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