冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。
この音を聞いたら、自然と体が震えてしまう。
今日の天気予報では、豪雨になるなんて言ってなかったのに。神様はいじわるだよ。
どうしてわたしばかりに、こんな酷い仕打ちをするの。
独りきりの夜に、この音を聞いたら必然的に思い出してしまう。
というか、体があの時の恐怖心を覚えてしまっているのだから、どうしようもないのだ。
「っ、だれか……、助けて」
わたしの口から力なく漏れ出た小さな弱音は、誰にも届くことなく、どこまでも続く闇夜に溶けて消えていく。
───あやかちゃんのお母さんって、インランなんだね。あやかちゃんもそうなの?
───あやかちゃんは卑しい家の娘だから、ままがもう遊んじゃいけないって。だから、ばいばいっ。
沢山、たくさん、傷つけられた。
心臓が抉られるくらいに、その心無い言葉がわたしの心をダメにしていった。
激しい雨音と雷の音を聞くと体が震えてしまうのは、幼い頃のトラウマが原因。