冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


この音を聞いたら、自然と体が震えてしまう。


今日の天気予報では、豪雨になるなんて言ってなかったのに。神様はいじわるだよ。


どうしてわたしばかりに、こんな酷い仕打ちをするの。


独りきりの夜に、この音を聞いたら必然的に思い出してしまう。

というか、体があの時の恐怖心を覚えてしまっているのだから、どうしようもないのだ。



「っ、だれか……、助けて」



わたしの口から力なく漏れ出た小さな弱音は、誰にも届くことなく、どこまでも続く闇夜に溶けて消えていく。



───あやかちゃんのお母さんって、インランなんだね。あやかちゃんもそうなの?


───あやかちゃんは卑しい家の娘だから、ままがもう遊んじゃいけないって。だから、ばいばいっ。



沢山、たくさん、傷つけられた。

心臓が抉られるくらいに、その心無い言葉がわたしの心をダメにしていった。


激しい雨音と雷の音を聞くと体が震えてしまうのは、幼い頃のトラウマが原因。

< 86 / 399 >

この作品をシェア

pagetop