冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


雷が鳴るほど激しい豪雨の夜は、お母さんは家に帰ってきてくれない。

どれだけ待ち望んでも、その姿を現してはくれない。


空を真っ二つに引き裂くくらい激しい雷の音を聞きながら、まだ3、4歳だった頃のわたしは溢れ出そうになる不安と悲しみを必死に押し殺して、我慢した。


お利口にしていたら、もしかするとお母さんが帰ってきてくれるかもしれない。

そんな叶わぬ願望を、胸に抱いて。


………結局、お母さんはわたしの元へと帰ってきてはくれなかったけれど。


普通の家庭の子からしてみれば、このことはなんてことないことなのかもしれない。


だけど、誰もいない雷の鳴る雨の夜に、いつまでも独りぼっちで、帰ってくるはずもない人を待ち続けた過去の記憶が、わたしの最大のトラウマ。


部屋の壁に取り付けられた時計が、静かに時を刻む音だけがこの部屋の中に流れている。


ベッドの上で体育座りをして、膝に顔をうずめる。

ギュッと結び合わせた両手は、驚くほどに冷たかった。


冷たくて、温かみのかけらもない自分の体を抱きしめながら、ふと今日の交流会の時のことが脳裏をよぎる。

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